リスク管理の根本にある考えは、リスクの分散です。これには、空間的に分散する方法、つまり性質の異なる、連関のあまりない複数の資産をもち、片方が下がっても、もう片方で持ち堪える、というものです。
たとえば片方は円安で利益が増える輸出関連銘柄、もう一つは円高で仕入れが有利になる内需銘柄を組み合わせるということです。あるいはFXであれば、先進国通貨と新興国通貨を組み合わせます。
出来れば双方の日足(ひあし、日次の終値の履歴)の前日との変化率を2年分とか計算して、相関を見て、連動性が低いか、逆の組み合わせを選ぶと良いでしょう。順相関の高いものを選んではいけません。暴落時にダブル損失になります。
こちらは業種や利益構造の異なるいくつもの銘柄を持てばリスクが分散されますが、資金の限られた個人投資家にとっては難しい方法です。
そこで、もう一つのアプローチとしては、時間的にリスクを分散すること、つまり一気に資金いっぱい買わずに、少しずつ分割売買していくやり方が考えられます。
たとえば100万円のタネ銭があり、200~300円で行ったり来たりしていた株価が200円になった、それチャンス到来と全資金をつぎ込んで5千株買った。ところがさらに下がって180円になってしまったら、どうしますか?
もう、実弾(資金)がない以上はどうしようもなく、10万(180-200円の5千株)の損切りか塩漬けしかありません。たとえば前回も例示した8411(みずほホールディングス)の場合、リーマンショック後に200円を割ったときに(こんな安値でメガバンク株が持てるとは)と喜んで何単位も買ってしまいましたが、さらに3.11のようなアクシデントでも起きて、100円近くまでこれでもかと落ちることさえありました。
このとき200円で種銭いっぱいに買っていた場合、株価が200円に戻らない限りは損失です。幸い、メガバンクとかその他東証一部のそのまた大型銘柄では配当も出ますので、たとえば8411を5千株もっていれば昨年実績だと6円X5,000で年に1回3万円を受け取ることができますが、50万円の損失を埋めるには16年以上掛かる計算です(実際は税金が掛かるので、手取りは80%になります)。
ところが、もしもこのとき損切りはしないとして、20円毎に買い増ししていったら、どうなるでしょうか。以下のようになります。
回数 買値 持ち株 平均値
1回目 200円 1,000株 200円: 200円÷1
2回目 180円 2,000株 190円: (200円+180円)÷2
3回目 160円 3,000株 180円: (200円+180円+160円)÷3
4回目 140円 4,000株 170円: (200円+180円+160円+140円)÷4
5回目 120円 5,000株 160円: (200円+180円+160円+140円+120円)÷5
というように、買値の平均値を下げていくことができます。
実際はあるところで損切りするのが現実的なやり方ですが、一気に種銭を全額使って買った場合は値段が200円に戻るまでは損失ですが、このように分割売買で平均値を下げていけば、160円まで戻ったらとりあえず損得ゼロで逃げることができ(手数料は考慮していません。実際のトレードでは、いちおう気にするべきですが)、もしも元の200円まで回復すれば、値幅の40円X5,000で逆に20万円の利益が得られます。
このように平均値を下げるために株を買い増すことを難平(ナンピン)といいます。日本ではすでに江戸時代から米相場があり、様々な研究成果や経験則から現在でも傾聴に値する相場技法が編み出されましたが、まさに難を平らにするというターミノロジーに感服する思いです。
また、このように株価の下落に合わせてナンピンするやり方を「ナンピン買い下がり」といいます。ただし、銘柄選びに失敗して、仕手株などでとんでもなく上昇したり下落するような銘柄を選ぶと、全額吹っ飛ばすこともあるので、変動の少ない安定した企業の株を選ぶ最初の段階が大事だと思います。
とにかくポジションを建てるときは、2~5年のヒストリカルデータを見て、十分に安値圏に来たところでそろりそろりとポジションを建て始める、このとき株価の5倍程度の資金があること、あるいは資金の5分の1くらいの株価の銘柄を狙うこと、そしてそのうちの3単位くらいを普通は使うことを心掛けるのがいいと思います。いざという時のために、残り3~4割は緊急資金として残しておくべきです。

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